完光堂の仕事

美術作品の軸装、額装、およびその修復を手がけています。作品に布などで衣装を着せたり、衣替えしたりする仕事です。

お客様にも、訪れるご友人にも喜んでいただける、作品を暮らしに織り込んだ、心ゆたかな生活のお手伝いをしています。

表具の世界は現在、「表装作家」という表現を中心にする方、「修復家」という書画の修復を専門にする方、「表具師」という伝統的なかたちを展開する方という三つに分化しつつあります。こうしたなかで、完光堂が目指しているのは、それぞれが向かっている方向を含んだ「今」を大切にする表具です。

伝統的な素材を大事にしながらもファションやファブリックの布、海外の布も使います。お客様のお気に入りの布や着物で仕立てることもできます。

修復に当たっては、無理に綺麗にするのではなく、時代感を大切にした丁寧な仕事を心がけています。現状の表具をそのまま再利用して、仕立て直す「締め直し」も承ります。

お客様の作品の他、作家さんの個展、ギャラリーさんの企画展のお手伝い。また完光堂ならではのこだわりの制作品の展示と販売もいたします。

表具がとくに興隆した室町時代から江戸時代前期にかけての古典表具を参考にしつつも、これからの表具のありかたを探り、お客様、作家さん、ギャラリーさん、表具にまつわる職人さんと共に歩むことで、この国で育まれた表具を、今という時代に息をするものにしたいと考えています。

掛軸への想い

「包む文化」と「作品を布で包む掛軸」

日本の掛軸は、それぞれの作品、季節、場所に応じた豊かな表現に富み、私にとって魅力は尽きません。

また作品だけではなく、古今東西の素敵な布、和紙をはじめとした素敵な工芸品、またそれを生み出す職人さんとの出会いもとても魅力的です。

掛軸は奈良・平安時代に大陸から伝わりながらも、今まで日本で独特な展開をしてきたのには、背景に平安時代の手紙の包み方から、現代のラッピングに至るまで、おもてなしの国ならではの、「包む文化」があったからこそと思います。

たとえば『源氏物語』には、歌を書いた手紙を相応しい紙で包み、それに花など添えるやり取りが書かれています。さらに、その頃の『勅撰和歌集』『源氏物語絵巻』『平家納経』のような調度本の紙と表紙は、文字を包むかのように金、銀、キラなどによって綺麗に装飾されています。鎌倉・室町時代に入るとそうした「平面的な手紙の包み、文字を包む紙の装飾」のほかに、書院や茶室飾に掛けるための「立体的に作品を布で包む掛軸」が発展するようになります。

形は違っても、そこには「包む文化」という心遣いが、共有されていると思います。

しかし、今日では「作品を布で包む掛軸」への関心はなくなってきています。美術館の図録を見ても、掛軸の全体像が収載されているものは「陽明文庫展」などごくわずかで、あまり必要ないかのようです。

布好きな方は沢山おられるので、数点でも入れていただければ、関心も確実に高まるのに……。もったいないと感じることが多々あります。また、掛軸の仕立てにおいて「作品の邪魔をしないように」ということだけに終始しているところがあります。それはとても大事なことではありますが、それだけでは見る人の都合ばかりで、傲慢ではないか?との懸念も湧いてきます。

「美しき佇まい」

作品を包むとは、「見る人」そしてまた「作品」への敬意でもあります。

古典的な掛軸、たとえば「利休」「予楽院」好みの掛軸などを見ていると、そうした気持ちが伝わってきます。もちろんそれは、ただ単に豪華にすれば良いというのではありません。

作品が放つ直の気持ち、雰囲気、人柄のようなもの。そして作品を見る人への心遣い。

作品とぴったりと息の合った掛軸に出会うとき、私は手に汗握るほど感激することすらあります。そこに生きているものに動かされ「美しき佇まい」と感じ入るからです。

掛軸はこれまで床の間で、ハレのものであったり、美しいものであったりして生活の中で共鳴し、日本人の心の奥行きを形作る大きな役割を果たしてきたと思います。

「美しき佇まい」として生活の中で分かち合い、ときに感動を与えてくれるものとして、これからもあってほしい、というのが私の心からの掛軸への想いです。

素敵な掛軸に出会ったなと感じていただけるように、微力ながらも取り組んでまいりたいと思います。

吉橋 玄雄